十川泉貨紙  伝統を受け継ぐ紙すき職人

 

 

四万十町の大井川地区にある工房を訪ねました。

18歳の頃から紙すき職人として技術を磨いてきた平野直人さん。

幼い頃から母方の実家で、和紙づくりの様子を見て育ったそうです。

楮の栽培や使用する道具の改良など、試行錯誤しながら18年。

機械に頼らず手漉き和紙を追求してきました。

 

 

十川泉貨紙 平野直人

 

 

泉貨紙とは、原料となる楮(こうぞ)を使った特殊な手漉き和紙です。

漉き上がった直後、二枚の和紙を一枚に合わせる製法が特徴で、やや分厚く強靭な紙が出来上がります。

愛媛から伝わった製法で、現在、日本では3箇所でのみ製造される大変貴重な伝承技術です。

丈夫な泉貨紙は文化財の修復などにも使われています。

 

    

 原料となる楮(こうぞ)

 

 

実際に道具を持たせてもらったのですが、

簾桁(すけた)に水の重さも加わるとかなりの重量感があります。

水を汲み上げながら前後左右に揺らす工程を繰り返すのですが、

大きな道具を扱うのも、水を履くタイミングもとても難しいものでした。

 

 

 

 初めて紙すき体験をする協力隊の陳さん  

 

独特の製法である、”折り返す紙を合わせる”  点に私も陳さんも苦戦しました。

それをさらりとこなしている様はさすが職人技です!

また年季の入った漉き舟の周りには、漉いた和紙の繊維が色濃く残っていて、

そこにあるだけで鮮やかなアート作品のように見えました。

濃淡ある和紙は時を重ねることで、趣深い印象を与えてくれます。

 

「和紙づくりは生き物を扱うのと同じ」

そのような感覚が伝わってきました。

 

 

 

水に濡れた繊維を扱うのはとても神経を使う作業。どんなに頑張っても一日200枚が限界だそうです。

また、冬場の水作業はなかなか厳しいものがあり、

ストーブで温めた手湯がとてもありがたく感じました。

 

 冬場の水仕事に欠かせない手湯

 

漉き舟には、原料の楮、水、ネリが入っています。

平野さんの工房では、ネリにアオギリという木の根っこが使われています。

紙を漉く前にまずネリを用意しなくてはいけないのですが、

このアオギリの根を川で洗ってきてハンマーで叩くなどの工程があるのだとか。

水を足してトロトロの状態になるまで約1週間。

ようやく出来上がったネリもその粘度の気温が高いと無くなってしまったり保管があまり効かないため、

暑い時期は化学ネリを使用するなど天候を見ながら調整するそうです。

そして原料となる楮も様々な工程を経て、ようやく”漉く”過程に入れるわけですが、

質問するごとに一筋縄ではいかない紙づくりの奥深い世界があることを知りました。

 

 

 原料のネリ

 

 

一番大変な作業は何かと尋ねると、

「楮のチリを手作業で取り除くこと」と、話してくださいました。

紙の品質を左右する大切な作業なのだそうです。

 

 

 楮のちり取り作業

 

平野さんの工房では、楮とミツマタを配合した和紙や、柿渋で染めた和紙などの作品も購入することができます。

また楮畑をご案内いただくこともでき、大変学びの多い体験をすることができます。

 

 

和紙の使い方は人それぞれ。

使い方次第で「無限大に広がる世界」がとても魅力的だと思います。

額に入れアート作品に。ご祝儀袋に。ランプシェードに・・・

皆さんなら、この和紙を使ってどんな伝え方や表現をしますか。

 

 

洋紙の寿命は100年程ですが、和紙の寿命は1000年とも言われています。

四万十町では小中学校の卒業証書に使われているそうですが、

美しい川の水で作られた丈夫な紙は、特別な日にふさわしく深みのある証書を演出してくれるでしょう。

 

このような四万十町に根付く伝統文化や人の温かさに触れる機会は何ものにも代えがたい経験です。

皆さんもぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。

 

<お問い合わせ先>

 十川泉貨紙製作販売所

 アクセス:四万十町大井川1509    土佐昭和駅から車で5分

 090-6280-9766(平野) 8:00~17:00  不定休

 ※梅雨の時期は出来ません

 ※2,000円/人 ( 材料費含む )  

 

 

 

 

Pocket

コメントを残す